最近では自宅で過ごす時間が多くなり、「せっかくだから戸建て住宅を検討しよう!というお客さまも増えてきました。(‘21年4月時点)
しかしながら、思いもよらない事態が住宅業界に巻き起こっているのです。せっかく住宅会社と契約をしても工期が延びてしまったり、請負契約を結んだ金額からの価格アップを提示される心配も出て来ました。
これは「ウッドショック」という国内の木材の不足と価格高騰に起因しています。
これから家づくりを検討している方は、こういった状況を踏まえてスケジュールや資金計画を検討していかなくてはならないため、今国内でどのようなことが起きているのか解説していきます。
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そもそもウッドショックとは?
2021年3月頃から、住宅建築に使用される木材価格が高騰し、住宅市場に大きな影響が出ています。この現象が業界内で「ウッドショック」と呼ばれています。
世界的に住宅市場が盛況すぎて、日本の住宅会社が木材を調達できない?
現在、世界的な建築需要の高まりによって木材価格が高騰しています。
これはコロナ禍の影響によって、世界中で建築需要が高まってきていることが要因の一つとしてあげられます。各国が金融緩和策を講じたことに加えて、特にアメリカなどではロックダウンやテレワークの浸透のため、在宅時間が増え、都心の集合住宅から郊外の一戸建てへと移住する人が増加したためです。アメリカの住宅市場に関しては20年5月から好転し、以後好調に推移しています。
出典:経済産業省・経済解析室ひと言解説集「新型コロナがもたらす供給制約;ウッドショックの影響」
こうした影響を受けて、まずアメリカにおける木材価格が高騰しています。
住宅需要だけでなく、DIYなども盛んに行われているため、アメリカの木材需要がより高まっています。その一方で、カナダでは松くい虫の被害による木材供給の減少が発生、加えてコロナ禍の影響で住宅資材の製造を減産していたため、需要の増加に対応できない状況となっています。
これに追い打ちをかけたのが、中国の木材需要の増加と世界的なコンテナ不足です。
中国の木材需要も大きく増加していますが、景気回復を見越していた中国企業が運送するためのコンテナを買い集めていることで、世界的なコンテナ不足が発生しているようです。
その影響で、今までに日本に入ってきていたヨーロッパからの集成材が入ってこなくなっているのです。
市場の関係者からは、「通常2カ月程度で日本に到着していたヨーロッパの集成材が、今ではいつ到着するのか分からない状況が続いている。2月到着予定のものが未だに届かないという状況が常態化しつつある。」という声もあがっているそうです。
コンテナ不足に直面しているヨーロッパの集成材メーカーは、陸路を利用して、ヨーロッパ圏や中東へと集成材を輸出し始めているようです。コロナ禍の世界的な木造建築需要が高まっていることで、ヨーロッパや中東でも木材需要は高まっているのです。
海路で運ばざるを得ない日本よりも、陸路で運べるヨーロッパ・中東圏に販売量が拡大しているようです。
下のグラフは、住宅に使う集成材の日本への輸入量を示したものです。(林野庁資料より抜粋)
徐々に輸入量が低下していて、2021年2月の集成材輸入量は、前年同月比21%減の約6万㎥で、5カ月連続の減少となりました。EUからの輸入量は同25%減という状況です。
ウッドショックにより住宅販売への影響も大きく
経済産業省のデータを見ると、ウッドショックは住宅販売にも影響を与えていることが分かります。
新築戸建住宅売買業を含む不動産業全体の動きは、感染症拡大の影響が大きかった2020年においても、多少の落ち込みは見られたものの、2020年全体を通してみると、例年と大きく変わらない水準で推移しました。
新築戸建住宅売買業については、不動産業とは異なる動きとなっており、感染症拡大の影響で2020年4月に大きく落ち込んだ後、8月まで大きく回復し、その結果、2020年は前年を上回る水準となりました。
ただし、月単位での動きを見ると、新築戸建住宅売買業は2020年8月をピークに大きく低下しており、輸入材の価格上昇と連動するように低下しています。コロナショックで落ち込んだ新築戸建住宅販売がようやく回復してきた矢先に、「ウッドショック」で足止めされた格好となっています。
出典:経済産業省・経済解析室ひと言解説集「新型コロナがもたらす供給制約;ウッドショックの影響」
住宅の構造部分に使用するプレカット材の供給減で、住宅ローン控除制度などへの影響も
プレカット材の供給減少により、住宅ローン控除などの住宅取得支援策などにも影響が生じるかもしれません。
現在では、集成材の価格が値上がりしているため、これを利用するプレカット材の価格も2~3割程度上がっている状況も出てきているようです。
材料調達の多くをヨーロッパに頼ってきた国内のプレカット工場(木材を加工する工場)では、調達不足のために新しい物件の依頼を受けられないといったケースもあるようです。
そうすると今後の住宅会社は影響を受けざるを得ない事態になると思われます。
住宅会社から、「契約をしても着工まで時間がかかります」と言われてしまう状況もあり得るのです。
国からは、住宅取得支援策として、「グリーン住宅ポイント制度」や「住宅ローン控除制度」などの政策が出されていますが、こういった制度を活用するためには、各制度の利用条件に当てはまらなくてはいけないのです。
例えば、住宅ローン控除制度には「自らがその住宅に居住すること。」という要件が入っており、その居住している住宅の年末のローン残高の1%が申告によって戻ってくる制度です。
通常であれば、12月に引き渡し予定であった物件が、材料が入らずに工期が伸びてしまい、入居が翌年の2月になると、その年のローン残高は減少している形になるため、控除金額も下がる可能性があるのです。
住宅購入を検討している方は、早めの相談を!まずはモデルハウスへ
世界的な影響から木材不足に陥っている住宅会社ですが、安定的に受注を行っている会社であれば、住宅価格の上昇や工事スケジュールの遅れなどの可能性は否めませんが、対策を練ってきちんと対応してくれると思われます。
このような状況でも、ご家族の計画に合わせてマイホームを持つこともとても大切です。
お子様のご入学のタイミング、テレワークや自宅時間の充実といったライフスタイルの変化などにより、「住宅を購入したい」とお考えであれば、早めのご相談をお勧めします。
通常であれば、ご相談からプランづくり・資金計画の立案、ご契約から着工までに約2~3か月という日数がかかるのですが、この着工のタイミングが延びてしまう可能性もございますので“いつから新居で生活をスタートしたい”のかという日程も含め、対応してくれる住宅会社を見つけておくこともポイントです。
今回の「ウッドショック」の影響がいつまで続くかは少し不透明な側面もあります。しかしながら、住宅購入を検討されている場合には、マイホーム計画にあわせて対応してくれる住宅会社に、早めにご相談するようにしましょう!