念願のマイホームを購入するとき、多くの人は住宅ローンを組むことでしょう。その際に必要となるのが頭金です。頭金の額は個々人の状況によるため明確な決まりはなく、それが逆にどの程度用意しておくべきかわからず悩みの種となりがちです。そこで今回は、マイホームを検討している人が知っておきたい、頭金の額や必要性について詳しく解説していきます。
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マイホームの頭金が1~2割と言われる理由とは?
ひと昔前まで住宅金融公庫(現在は住宅金融支援機構)で住宅ローンを借りるとき、借りられる金額が購入額の8割まででした。そのため、最低でも購入額の2割程度は頭金として用意する必要がありました。(※1)その名残として、今でも頭金は1~2割程度用意しておいたほうが良いといわれています。しかし、頭金の割合は別段法律などで決められているわけではなく、2014年より住宅金融支援機構からは全額融資、つまり頭金がなくてもフラット35で融資を受けることができるようになったのです。その代わり、頭金なしの場合の金利は頭金ありのものよりも0.4%ほど上乗せされています。(※2)このように、頭金は場合によってはゼロでも問題ないものです。マイホームの頭金が1〜2割というのはなんとなくそういうものだというだけで、明確な決まりがあるわけではありません。頭金がゼロだとマイホーム購入への道が開けるという人も多いため、家の購入を希望している人にとってはうれしいことだといえるでしょう。
マイホーム購入における頭金の必要性とは?
頭金がなぜ必要なのかというと、頭金の額が多いほど住宅ローンの返済を早く終わらせられるからです。例えば、2000万円の住宅を購入する場合、頭金が100万円と1000万円とでは、金融機関などから借りる額が1900万円と1000万円と大きく異なります。さらに、住宅ローンで借りた分の額には当然金利がつきます。頭金が小さいと返済期間が必然的に長くなることが多いため、その分たくさん金利を支払わなければならず、最終的に返済する総額が大きくなるでしょう。また、頭金には万が一住宅ローンの返済が滞った場合に住宅を売りやすいというメリットもあります。新築住宅を購入する際、住宅会社の利益は2〜3割程度(大手の場合は4〜5割程度)です。すなわち、2000万円の新築住宅の場合はおよそ400〜600万円が住宅会社の利益のため、新築の状態ですぐさま売却したとしても家の価値は1200〜1600万円程度にしかなりません。マイホームを売ったお金で住宅ローンを返し切ることができないと、基本的に家を売却するのは不可能です。つまり、上記のケースでは住宅売却に伴う住宅ローンの返済のために、住宅会社の利益分である住宅購入額の2〜3割程度(400〜600万円)のお金を用意しなければならないのです。それだけの資金があったら多くの場合住宅ローンの返済に困ることはなく、家を売る必要はないと考えられるでしょう。
マイホームの購入で頭金を用意したほうが良い人とは?
マイホームの頭金を用意するべきかどうかは、個々人の考え方次第といえるでしょう。もしも住宅ローンをできるだけ早く返したいのなら、頭金はある程度用意しておくべきです。頭金が多いほど住宅ローンが早く完済できる可能性が高く、住宅購入にかかる最終的なコストを削減できます。また、毎月支払う住宅ローンの額を減らしたい人も、頭金を用意したほうが良いでしょう。同じ30年の住宅ローンでも、頭金の有無で毎月の返済額は大きく異なります。長期的な返済計画に合わせて、頭金をどのくらいにするかを決めてください。そして、頭金を用意しても貯蓄を残せるという人も、頭金を用意すべきといえます。頭金を多く払えばその分利息をたくさん払わずに済むのは確かですが、人生は何が起こるのかわからないため、ある程度の貯蓄は残しておいたほうが安心です。したがって、貯蓄をゼロにしてまで無理に頭金を作る必要はなく、世帯の経済状況をバランス良く見て金額を決める必要があります。
マイホームの購入で頭金を用意しなくて良い人っている?
頭金を用意したほうが良い人もいれば、逆に頭金を用意しなくても良いタイプの人もいます。例えば、頭金を支払うと貯蓄がゼロになってしまう人は、頭金を減らすか、頭金がないフルローンを組むかのどちらかを選んだほうが良いでしょう。貯蓄がないということは、万が一働けなくなるなどの理由で収入が減ってしまったときに、生活予備費がゼロの状態になりとても危険です。生活するのが苦しい状態では、必然的に住宅ローンの返済も計画通りに行かないことが予想されるでしょう。そうなると、結果的には注文住宅など思いを込めて建てたマイホームの売却をしなければならなくなる可能性も高くなります。このようなリスクを避けるために、貯蓄がなくなるような返済計画をしたマイホーム購入はおすすめできません。頭金がなくても借りられる住宅ローンはあるので、将来的なリスクまでを含めた全体のバランスを良く見て頭金の額を決めることが重要です。
頭金0でマイホームを購入する前に考えておきたいこと
頭金がないということは、長期的にコツコツと返済をしていかなければならないことを意味します。そのため、10年後、20年後のライフプランを綿密に立てる必要があり、年齢を重ねてから起こりうる病気などのリスクも考慮しておかなければなりません。住宅ローン返済中、若い世代の夫婦は妊娠や出産、子育てなどでどちらか一方の収入が減ることも考えられます。また、住宅ローン返済中に子どもは何歳になるのか、その間どのようなライフイベントが発生し、出費はどのくらいになるのかなどを細かいところまで考慮したうえで、頭金0のフルローンにすべきかを考えましょう。
頭金は多ければ多いほど良い?
頭金が多いほど良いのは、資金に余裕のある世帯のみです。すでに述べたように、頭金を多く入れれば利息は減っていき、最終的な支払い総額を低く抑えることができます。しかし、頭金によって貯蓄が減ったり毎月の生活が圧迫されたりなど、マイホームの購入が生活の負担になるのはNGです。頭金は無理をしてまで多く入れる必要はなく、住宅ローンはあくまでも生活に支障のない範囲で組み、きちんと返済していける道を最優先に選んでください。頭金の目安は単純に住宅購入額の1〜2割と考えるのではなく、住宅購入額と住宅ローンで借りても問題がないと思われる額から算出します。例えば、物件取得に関わる諸経費なども含めた住宅購入の総額が2500万円で、住宅ローンの借入額を2200万円とする場合、必要な頭金は300万円、すなわち住宅購入費用の12%となります。
ベストなマイホームの頭金は世帯によって変わる
ベストなマイホームの頭金の額は、世帯の事情によって変わります。頭金は多すぎても少なすぎても、場合によっては家計を圧迫することがあるので注意が必要です。頭金や住宅ローンについて親や上司など住宅ローンを借りた経験のある人たちに意見を聞くことも大切ですが、返済計画はそれぞれの世帯によって大きく違うものです。経験者のアドバイスをそのまま鵜呑みにするのではなく、常に「自分たちのケースではどうだろう」ということを念頭に入れて、適切な頭金の額と毎月の返済額、完済までの期間を決めましょう。注文住宅でマイホームを建てる場合は特に、家族の思いが家にたくさん詰まっているものです。思いを込めた我が家をお金が原因で手放してしまうという事態にならないように、住宅ローンやその頭金について深く考える必要があります。住宅ローンを上手に利用して、理想のマイホームを手に入れましょう。