2020年から続いている新型コロナウイルス感染症拡大は、私たちの暮らし方や家づくりも大きく変化してきました。特に家づくりにおいては、在宅ワークの普及やいわゆる「おうち時間」の増加により、家づくりを行うエリアの変化や住宅に求められるニーズにもコロナ禍以前と比べて変容してきました。
今回はウィズコロナ時代の家づくりのポイントを解説していきます。
コロナ禍で生活はどう変わったのか?
新型コロナ感染症拡大により、私たちの暮らし方はどのように変化してきたのかを簡単に整理してみます。
働き方の変化~在宅ワークの拡大~
最も大きな変化が起きたのは、在宅ワークの普及による「働き方」ではないでしょうか。
行政からの要請等により、大多数の企業が在宅ワーク(テレワーク)という働き方を導入してきました。
東京商工リサーチが企業を対象に実施した調査では、1回目の緊急事態宣言時には17.6%から56.4%へと上昇、その後、緊急事態宣言解除後には低下したものの、2回目の緊急事態宣言時には38.4%に再上昇しています。
急激に普及していった「在宅ワーク(テレワーク)」は今後も新しい働き方として定着していくことでしょう。
接触を避けた買い物形態
「買い物」の仕方についても、生活の中で大きく変化したのではないでしょうか?
以前は、店舗にある程度の頻度で出かけていき買い物を行うのが一般的ではあったと思いますが、他人との接触頻度を減らしたりするために食料品や日用品などの買回り品などはまとめ買いする傾向が増えていきました。
また「わざわざ出掛けていく」ことを避けるために、ネットショッピングで様々なモノを購入するようになったり、飲食店へは休業要請の影響もあり、テイクアウトやデリバリーを利用する機会も増えたのではないでしょうか?
おうち時間の増加
在宅ワーク(テレワーク)の普及や外出機会の減少により、自宅で過ごす時間いわゆる「おうち時間」が増加しています。
「おうち時間」の増加により、自宅でいかに快適に過ごすようにできるかが注目されるようになりました。また、在宅時間の増加により光熱費・水道代などの費用が上昇しているお宅も多く、特に省エネに対しての関心は高まっています。
感染対策や衛生意識の向上
そして大きく生活様式の中で変わったのは、「衛生意識」なのではないでしょうか?家の中にウイルスを持ち込まないようにする、家庭内での感染を広げないための対策を行うなどの意識が高まっています。
外出時のマスク着用や帰宅時の石鹸を使った手洗いなどは過剰なほどの当たり前になっており、また建物のドアノブやスイッチなどは消毒を頻繁に行ったり、非接触型や抗菌仕様のものが求められようになりました。
コロナ禍で新築一戸建てが注目を集める理由
こういったウィズコロナ時代の傾向として、「新築一戸建て住宅」への住み替えニーズが高まっています。
国土交通省が実施したアンケ―トでは、約1割の方が「住み替え意向」や「購入する住宅の建て方に関する意向」にコロナの影響があったと回答しています。
この影響があったと回答されている方のうち9割以上の方が、現在住まわれている住居からの住み替えへの意向が強まっています。
特に、現在共同住宅(アパートやマンション)にお住いの方は、新築一戸建への住み替えを希望される傾向がコロナ禍以前よりも高まっています。
また住宅を購入して住み替える際にどのような住宅を検討するかという質問には、約3分の2の方が「新築」を検討したいと回答されています。
なお、「新築住宅への住み替え」を希望しない理由のトップは、「予算的に新築住宅は高すぎるため」と回答。逆に捉えると「予算が合えば」新築住宅を希望される方も多そうです。
コロナ禍の家づくりのポイント
それでは、ウィズコロナ時代の家づくりのポイントを解説していきましょう。
ウイルスを持ち込まない間取りの設計
安心して暮らすためのゾーニング
家づくりを進めていく上で、まず重要になるのはプランニング(設計)における「ゾーニング」です。
ゾーニングとは住宅設計の中で、宅内の空間をどう区分していくか、また玄関や階段、居室や収納スペース、水廻りなどの配置や動線を検討していくことです。
リビングやダイニングのように家族で食事をしたり、くつろいだりするゾーンや、仕事をするためのゾーン、寝室などのプライベートゾーンなどに分けられていきます。
ウィズコロナ時代において重要なのは、衛生面に配慮し、まずはウィルスを持ち込む可能性があるゾーンとそうでないゾーンを区分しておき、なるべくそのゾーンが交わらないように設計を行っていきます。
例えば玄関から直接洗面所や浴室に入れるように導線を作ったり、外部からリビングを通らずに2階の居室に入れる設計として、リビングやキッチンへの動線とは交わらないような配置にすることも検討できます。
また、ご家族が感染した場合にも対応できるように配慮しておきましょう。
感染してしまったご家族をある程度個室で行動を制限できるようにせざるを得ませんが、他の家族との生活空間を分けるため、個室から直接トイレや浴室に入ることのできる導線設計ができると良いでしょう。
この場合、個室から出る場合にはマスクを着用し、消毒や手袋をした上で部屋から出ていただくことは徹底しておきましょう。
玄関近くの手洗い洗面
室内にウイルスを持ち込ませないようにする習慣も重要です。
帰宅後、すぐに「手洗い・うがい」をすることが感染予防には有効と言われています。
そのために、玄関スペースの近くに洗面所や浴室などの水まわりを配置し、手洗いやシャワーをしてから生活する居室に入れるようにするなどを検討しましょう。
水廻りが配置できないときは、玄関横に小型の洗面台を設置するケースも増えてきています。玄関の外部に手洗い用の水栓を設置したりする方法もありますね。
まずは生活空間に入る前に、「手洗い・うがい」をできる環境にしておきましょう。
上着や帽子・鞄も収納可能なシューズクローク
上着や帽子・鞄も収納可能なシューズクローク 外出して帰宅した際、直用していた靴や上着などはどうしたら良いでしょうか?これらはウィルス等が付着している可能性があるため、生活空間に持ち込まない方が衛生面から考えると感染対策には有効です。
例えば、玄関横に大きめのシューズクローゼットを配置してはどうでしょうか?ウイルスを部屋に持ち込まないために、靴以外にも上着や帽子を掛けておけるハンバーラックを作ったり、鞄や外遊びのボールや遊具を収納できる棚を設置したいすることもおススメです。
在宅ワークを快適にする環境づくり
在宅ワーク(テレワーク)が普及・浸透してきた影響で、在宅勤務の環境で3人以上の世帯で「個室がある・仕切られたスペースがある」と回答されている方は約7割になっています。
これは、特にリモート会議などを行う場合、音などの問題も含めて個室が必要になるためでしょう。
また配管が可能であれば、無線LANの使用よりも有線LANケーブルを配線しておくほうが回線は安定するため、リモート会議が多い方にはおススメです。
仕事のスタイルに合わせたワークスペース
「お子さんの様子を見ながら、仕事をしていたい」という方もいらっしゃるかもしれませんね。この場合は、個室タイプではなく、キッチンカウンターやリビングやダイニング横を活用したオープンタイプの小さなワークスペースを設置することが可能です。(造作家具などで工夫して設置するとオシャレですね。)
また廊下や階段下を活用して、作業するためのワークスペースを作ることも可能です。
在宅ワークのお仕事内容や働き方、ご家族との関係に合わせて計画していきましょう。
ひと息つけるテラスやバルコニー
在宅ワーク(テレワーク)により、オフィスと異なる環境で業務を行うことで色々なストレスが発生することがあるようです。
「仕事とプライベートが切り分けられない。」
「ダラダラと長く仕事をしがちになる。もしくは逆に怠けてしまう。」
「気分転換のタイミングが難しい。」
というようなことから、大きなストレスを抱えてしまうことがあります。
そのために、時間管理を行うためのスケジューリングを行いながら、外の空気に触れるためのテラスやバルコニーを設置し、適度に休憩を行い、気分転換が行える環境を整えておきましょう。キャンプ用のテーブルやイスを置けば、ちょっとしたアウトドア気分になれたり、休日にはご家族でBBQなどを行うこともできますね。
コロナ禍で充実した暮らしを送るための住宅設備
ウィズコロナ時代に対応した住宅設備も増えてきていますので、ご紹介させていただきます。
快適な室温を保ちながら適切な換気をできる「熱交換型換気システム」
感染対策において、「換気」は推奨されており、1時間に2回程度の換気が有効とされています。ただし、エアコンで温めたり、冷やしたりした部屋を換気することで、快適な室温を維持できなくなっていまします。
この問題を解決できるのが、「熱交換型換気システム」です。
これは熱交換という技術により、室内の温度や湿度を保ちながら、強制的に室内の汚れた空気と外のきれいな空気を入れ替えることができる換気システムです。しっかりと換気できるだけでなく、冷暖房の効率も上がることで省エネ効果も高まります。
「室内窓」で換気対策をしながら、オシャレな部屋に
外部と接していない部屋は、窓を開けて行う自然換気は行いにくくなります。
そういった場合には、換気扇を設置して強制換気することもできますが、間仕切り壁に室内窓を設けることも検討してみましょう。ある程度の通風や採光を確保しながら、インテリアとしてもおしゃれな印象の部屋になります。
非対面で荷物を受け取れる「宅配ボックス」
コロナ禍において、ネットショッピングなどの利用が増えたこと、また不在による再配達の回避や非接触ニーズの高まりにより、「宅配ボックス」が注目されています。
今は「置き配」という配送方法も取れるようになり、「宅配ボックス」があれば、濡れたり盗まれたりする心配がなくなります。
後から設置することも可能ですが、設計段階で宅配ボックス専用のスペースを作ったり、郵便ポストと一体型のものを選べば、よりスマートな設置が可能となります。
家族で料理を楽しむ「キッチン」
「おうち時間」が増えたことで、家族で料理をする機会も増えたお宅も多いのではないでしょうか?今までは、奥様が料理をされていたご家庭でも、ご主人やお子様と一緒に料理や片づけをされるケースが増えてきたようです。
複数人でも使いやすいキッチンにするためには、調理するための作業スペースを大きめに配置したり、配膳や片づけがしやすいようなテーブル一体型のキッチンにすることも検討していきましょう。
またキッチンとコーディネートしたお皿や食材の収納ユニットを設置することで、空間の一体感が出る素敵なキッチンスペースを実現できます。
まとめ買いに便利な「パントリー」
「パントリー」とは、食料品や日用品をストックしておける備蓄庫です。
ウィズコロナ時代では、買い物の頻度を減らすためにまとめ買いをしたり、通販で購入したものをストックしておけるパントリーをつくっておけば、キッチンをすっきりと保つことが可能です。
パントリーを上手に活用するポイントは、できるだけ玄関や勝手口の近くで収納しやすい位置に設置すること、またキッチンから出し入れしやすい設計にすることです。
何を備蓄していくかにもよりますが、大体0.5~1畳分のクローゼット型パントリーを設計することは可能です。ウォークイン(ウォークスルー)型であれば、2畳分くらいの広さがあると、お水やお酒などの缶・ペットボトル、またお米などのかさばる食品も余裕をもって収納できます。ご家族の人数や生活スタイルによって、どのくらいの大きさにしていくか検討していきましょう。
非接触で操作できるアイテム
家庭内感染の経路として、スイッチやドアノブ、水栓などへの接触が挙げられます。 帰宅時に手を洗わずに電気のスイッチに触ったり、手を洗う際に蛇口に触れたりすることで感染経路になってしまうそうです。
最近では、そういった感染対策として「タッチレス機器」が人気です。
タッチレス機器とはセンサーを使って機器をON-OFFする設備で、水栓やスイッチ、ライト、ドアなどに使われています。
手をかざすだけで水が出る水栓や、人が近づくと点灯する人感センサー付きライト、音声でコントロールできる機器も普及し始めていますね。
このような非接触タイプの設備を使うことで、家庭内感染を最小限に抑えることができるようになります。
抗菌・抗ウイルス建材
コロナ禍以降、建材分野でも抗菌・抗ウィルス製品の開発が進んできました。
フローリング、壁、ドアノブ、手すりなど接触が多い箇所に、抗菌・抗ウィルス性の高い建材を採用することによって、コロナのみならずインフルエンザや風邪などの予防になると言われています。またトイレやユニットバスにも抗菌・抗ウイルス性の高い製品が開発・発売されています。
抗菌・抗ウイルス建材・部材を用いれば、感染対策が完璧に行えるわけではありませんが、高齢者の方や小さなお子さまと住まわれるご家庭では、導入を検討してみてはいかがでしょうか?
まとめ
ウィズコロナ時代となり、暮らし方が大きく変化し、特に「在宅ワーク(テレワーク)」という働き方の定着、「おうち時間」の増加により、家づくりに対して求められるものも大きく変わってきました。
また設計や採用する建材・部材にも暮らし方だけでなく、感染対策なども踏まえて検討していかなくてはなりません。
ただし、家づくりの際には「建てたい家」を「適切な建築資金」で実現する必要があります。これはやはりプロと相談しながら進めていかれることをおススメします。
(他にも検討しなくてはいけないことは山のようにあります!)
ぜひ「家づくり」をご検討されている方は、一度モデルハウスへご相談にいらっしゃってください。