審査結果発表
審査委員長
難波和彦
審査委員長講評
「プラットフォーム」というコンセプトに注目したことが決定的だと思う。おそらく応募者自身も考えたと思うが、プラットフォームという言葉には、移動する電車が一時停車するプラットフォームという通常の意味と、コンピュータのハードウェアやオペレーティングシステムなどの基盤となる前提条件という目に見えない現代的な意味が重なり合っている。この案では、そのような二重のコンセプトに基づいて、かつては線路だった線状の敷地に、現代住宅における「動的な仮設性」と「静的な基盤性」という二つの意味を、線状の空間に埋め込んでいる。個人の活動に対応する多様な空間ユニットを、土間空間を挟んで線状に並列し、一つの屋根によって柔らかく結合することによって建築化している点が見事である。審査委員長講評
この案も「路地」というコンセプトに注目した点が決定的である。「プラットフォーム」のクールで現代的なイメージに比較すると、「路地」はややアルカイックで懐かしさを連想させる。移動よりも滞留をめざしている点においても、最優秀案とは対照的である。箱型の大きな空間内に、塔状の二つの箱を不規則に配置し、階段によって立体的に結びつけることによって、周囲に路地のような空間をうみ出している。手描きによる絵本のような表現が、路地のような空間の詩的で優しい雰囲気を醸し出している。審査委員長講評
長方形平面を3×5グリッドによって15の正方形の空間に分割し、それぞれに機能を与えたダイアグラマティックな提案である。15の単位空間を仕切る壁に開けられた開口のサイズや位置に微妙な変化を与えることによって、内外空間を相互に絡み合わせながら、さまざまな機能と用途に対応するフレキシブルな場所をつくり出している。どことなく既視感のある手法だが、どことなく古典的な感性を感じさせる。審査委員長講評
「拠り所が移ろう家」に似たコンセプトだが、2×5グリッドによって10個の同一サイズの空間に柔らかく分割し、高さ方向に規則的な変化を与えて一室空間化している。緩やかに分割された空間内に、個に対応する箱状の空間を入れ子状に配置して空間を仕切り、変化を与えようとしている。しかしグリッド空間と箱空間が完全に分節しているため、空間がやや単調になっている点が惜しまれる。審査委員長講評
平坦な床の一部を彫り込んだ一室空間でありながら、天井からの垂れ壁の高さに変化を与えることによって、心理的な領域感覚をうみ出そうとした提案である。間仕切壁を使わない空間の分節法を追求した興味深い提案だが、本コンペの課題「世代をつなぐ家」への回答としては、コンテクストが今一理解しにくい。審査委員長講評
正方形平面を3×3グリッドで9個に分割し、窓際や壁の交差部分に「ちゃぶ台」のような「虚」の空間を差し込むことによって、仕切りながら繋ごうとする、きわめてダイアグラマティックな案である。論理的な操作による個の連結手法としては興味深いが、2層上下の連結にまで展開していない点が惜しまれる。